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細胞の老化

動物の皮膚などの組織を取り出して、タンパク質分解酵素を作用させると細胞が遊離されてくる。これらの細胞を培養液の入ったシャーレに入れると、細胞はシャーレの底に付着して増殖を始める。この方法でヒト胎児の体細胞の増殖の様子を調べると、分裂回数とともに徐々に増殖能を低下させ、50回分裂すると増殖を停止する。これが細胞の老化である。種々の動物細胞についても調べられており、体細胞の分裂寿命と動物の最大寿命とは相関関係がある。寿命が約45年のウマでは20〜30回であり、寿命2年のマウスでは8〜12回である。このように、最大寿命の長い動物はそれに比例して細胞の分裂寿命も長い。

テロメアは、短い特定の塩基配列が数百から数千回規則正しく繰り返されており、染色体の安定性の保持や遺伝子発現を制御しているのではないかと推測されている。テロメアは、DNA複製の際にDNA合成酵素の性質により完全には複製されないため、その長さは分裂毎に50〜150塩基対短くなる。それゆえ、年齢の高いヒトの体細胞は短いテロメアを持ち、分裂寿命も短い。また、早期に老化症状が現われる遺伝病患者の体細胞のテロメアは正常体細胞に比べて短く、分裂寿命も短い。これらのことより、テロメアの長さは、細胞がその時点までに何回分裂したのか、これから何回分裂できるのかを図る分裂時計の役割を持っていると考えられている。一方、テロメア細胞分裂に伴う短縮に対抗してテロメアの長さを保つ働きをしているのが、テロメラーゼと呼ばれる酵素である。テロメラーゼの活性は、生殖細胞では高いが体細胞では検出されていないため、体細胞を培養していくとテロメアは短くなり、やがて一定の長さに達すると細胞は分裂を停止すると考えられている。

エネルギーの摂取量を制限すると動物の寿命が延長されることが古くから知られている。過剰なブドウ糖は、細胞中に存在する種々のタンパク質と非酵素的に反応して糖化タンパク質を作る。タンパク質が糖化されると、その機能が低下し、やがて細胞は老化する。

ミトコンドリアはATPを合成するために多量の酵素を消費するので、ミトコンドリアDNAは酸化による損傷を受けやすい。このため、細胞を長期間培養しているとミトコンドリアDNAに変異が蓄積され、やがて細胞は老化する。