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ゲラニオール

ラニオール (geraniol) はゼラニウムから発見された直鎖モノテルペノイドの一種。主にローズオイル、パルマローザ油、シトロネラ油に含まれる。また、ゼラニウムやレモン、いくつかの精油にも含まれている。無色または薄い黄色の液体で、水には溶けないが多くの有機溶媒には溶ける。バラに似た芳香を持ち、広く香水に使われている。また、モモ、ラズベリー、グレープフルーツ、リンゴ、プラム、ライム、オレンジ、レモン、スイカ、パイナップル、ブルーベリーのような芳香としても用いられる。

研究によって、防蚊剤の効果があることが示されている[1][2]。また、ミツバチはニオイ腺で合成したゲラニオールを使って蜜を持っている花とミツバチの巣の入口を標識する。

ラニオールが置換基となったときはゲラニル基と呼ばれ、他のテルペンの生合成にとって重要である。

酸性溶液中ではゲラニオールは環化してα-テルピネオールとなる。

物理学者の傲慢さが問題だ。

ラニオール

IUPAC
3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール

識別情報
CAS登録番号 106-24-1
EINECS 203-377-1
SMILES
CC(C)=CCC/C(C)=C/CO
特性
化学式 C10H18O
モル質量 154.25 g/mol
密度 0.889 g/cm3
融点
15 ℃

沸点
229 ℃

水への溶解度 不溶
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ヘんせい
【変性】
通常のものと変わった性質をもつこと。 「―アルコール」
フィードバック

変性(へんせい、英語:Degeneration)とは、退行性病変の一つで、細胞や組織に正常では存在しない物質が沈着ないし、正常でも存在するが沈着量や場所が異常なものをさす。

水腫性変化
空胞変性(水様変性)
細胞質内の水分増加が起こり、その後空胞が生じるもの。浸透圧ネフローゼ
タンパク変性
角質変性
角化が亢進。
硝子滴変性
細胞質内にタンパク質の小顆粒が出現。水銀中毒、ネフローゼ
ラッセル小体
形質細胞に過剰産生された免疫グロブリンが沈着。
粘液変性
糖タンパク質が細胞内に沈着。
硝子様変性
均一無構造のタンパク質である硝子質が結合組織に沈着。瘢痕組織、結核、高血圧、多産。
アミロイド変性
アミロイドが沈着。原発性、続発性、限局性(透析による)、コンゴ赤染色、慢性関節リウマチ、結核、癌腫、多発性骨髄腫に伴うものがある。
フィブリノイド変性
フィブリノイドが沈着。悪性高血圧、膠原病(PN、SLE)、自己免疫疾患
脂肪変性
脂肪が沈着。脂肪肝、動脈粥状硬化症、四塩化炭素中毒。
糖原変性
グリコーゲンが細胞内に蓄積。糖尿病、糖原病結核、肝硬変。
病的石灰化
正常では見られない組織にカルシウム塩が沈着する。副甲状腺ホルモン、カルシトニン、ビタミンDの異常などが原因。
尿酸沈着症
尿酸が沈着。尿酸の代謝障害による。痛風
色素沈着
色素が沈着。外来性色素と内生色素によるものがあり、前者は炭粉など、後者はメラニン、ヘモジデリン、ビリルビン、リポフスチンなどがある。

『新口腔病理学』(医歯薬出版、2008年6月)

生化学分野における変性 →#変性 (生体高分子)
アルコールの変性 →#変性 (アルコール)

生体高分子の変性(英語:Denaturation)とは、ポリマーの二次構造が破壊されることを言い、変性した核酸やタンパク質などの生体高分子は高次構造を失い変化することである。核酸やタンパク質の三次構造が壊れた状態はランダムコイルに近いが、このような、生体高分子の変性の結果である状態を変性した状態と呼ぶ。原因としては熱(高温、極度の低温や凍結)、酸・アルカリ、界面活性剤、有機溶媒や、変性剤と呼ばれる化学物質、あるいは圧力、超音波や攪拌などがある。

タンパク質は水素結合、疎水結合、イオン結合などにより高次構造(二次~四次構造)を保っているが、これらが破壊され特徴的な折りたたみ構造を失うと変性する。タンパク質変性剤には、水素結合を破壊する尿素やグアニジン塩、疎水結合を破壊するドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤がある。酵素は変性すると触媒作用を失い、その他のタンパク質も機能を失う。かつてはタンパク質の変性は不可逆と考えられていたが、多くのタンパク質では変性剤を徐々に取り除くなどの方法で正しい構造を取り戻すこと(再生)が可能である他、生体内にはシャペロンと呼ばれる折りたたみを助けるタンパク質が報告されている。(「タンパク質の熱力学的安定性」の項を参照)

タンパク質の変性は食品の加工にもよく用いられる。例えば肉や卵の加熱調理、豆腐やヨーグルトの凝固、ゼラチンの製造(コラーゲンを熱変性させて作る)などである。

核酸は、核酸塩基の間の水素結合により二次構造(DNAの二重らせん構造やRNAの特徴的な折りたたみ構造)を保っている。この水素結合が破壊されると変性が起き、DNAでは二重らせんが2本の一本鎖に分離する(DNAの巻き戻しを参照)。

変性は熱力学的に相転移の性質を示すことがある。特に核酸の熱による変性は、一定の温度(配列によって異なる)で急激に起きるため融解とも呼ばれ、逆に融解した核酸の温度を徐々に下げて復元させることを再生または再結合あるいはアニーリング(英語:annealing 金属加工の焼きなましの意)もしくは再アニーリングと呼ぶ。

アルコールの変性(英語:Denaturation)とは、エタノールに飲用防止のためメタノールなどを混入する意味である。

シャペロン(英: chaperone)とは、他のタンパク質分子が正しい折りたたみ(フォールディング)をして機能を獲得するのを助けるタンパク質の総称である。分子シャペロン(英: molecular chaperone)、タンパク質シャペロンともいう。

シャペロンとは元来、若い女性が社交界にデビューする際に付き添う年上の女性を意味し[注釈 1][1]、タンパク質が正常な構造・機能を獲得するのをデビューになぞらえた命名である。

シャペロンとは、折りたたまれていない(変性状態の)タンパク質に結合し、それが適切に折りたたまれた状態(天然状態)になるのを助けるタンパク質の総称である[2]。折りたたみ (フォールディング)はタンパク質が適切な構造と正常な機能を獲得するプロセスである。シャペロンはフォールディング完了後には基質との結合を解いて遊離し、フォールディング後の基質の一部とはならない。また、シャペロンの構造は反応前後で変化しないし、フォールディング後の構造を指定しない。天然体の構造は基質のアミノ酸配列によって行われ、シャペロンはあくまでネイティブ構造の形成がなされやすい環境、または機会を提供するだけである。

シャペロンの機能はフォールディングの補助だけではない。タンパク質の品質管理(複合体形成、輸送、リフォールデング、脱凝集)も担っている。

これらの機能は生命活動において必須事項であるため、シャペロンは必要不可欠な存在である[3]。分子シャペロンの異常は、細胞の恒常性維持に関わるタンパク質の機能不全を引き起こす。具体的には、代謝系の異常、腫瘍の進行、神経変性疾患、心血管障害などの病気の進行の要因となると考えられている[4]。また、別の見方をすれば、細胞内に存在する個々のタンパク質のコンホメーション、結合相互作用、局在 および濃度の制御(タンパク質恒常性)が適正化かつ維持されるためにシャペロンは必須の要素である。

大部分のシャペロンは正常に機能するためにATPのエネルギーを要するが、シャペロンには様々なものがあり、詳細な機能については不明の部分が多い。

多くのシャペロンは熱ショックタンパク質HSP)であり、温度の上昇による損傷を抑制するための熱ショック応答を担う[5]。つまり、タンパク質のフォールディングが熱によって変性した場合に、そのタンパク質の折りたたみを適切になるよう制御する。熱ショックタンパク質としてのシャペロンは例えばSmall HSPs、HSP40、HSP60、HSP70、HSP90、HSP100などである[1]。

低温ショック応答を担うRNA結合性シャペロンの一群を低温ショックタンパク質(Csp)(RNAシャペロン)と呼ぶ。Cspは、RNA上に生じた余分な二次構造を一本鎖状にほどき、遺伝子発現とタンパク質合成を可能にする。Cspには低温応答性のものと非低温応答性のものがある。大腸菌の場合、Csp遺伝子は9種類あるが、そのうち4つが低温応答性である[6]。

ほとんどのタンパク質はシャペロンなしでも折りたたまれるが、一部にはシャペロンを必須とするものもある。翻訳を経て新規合成されたばかりのポリペプチド鎖のフォールディングに限定すれば、細胞内タンパク質の30%がシャペロンの介添えを要求する[7][8]。

新生ポリペプチド鎖の多くがシャペロンを必要とする理由は、作られたばかりでは疎水性のアミノ酸残基は周囲の水分子に露出しており(天然体では疎水性残基は内部にあり、周囲の水分子から隔離されている)、水分子から逃れるために最初に遭遇した他の疎水性残基と結合しようとするためである[9]。最も近くの疎水性領域は間違った結合相手である場合が多く、手当たり次第の相互作用は間違ったフォールディングを導く。こうしてフォールディングに失敗したタンパク質は凝集する傾向があり、凝集したタンパク質は細胞にとって非常に有害である(例としては牛海綿状脳症の原因であるプリオンタンパク質[9]や、アルツハイマー病の原因となるβアミロイドタンパク質など)。

シャペロンは、正しい結合相手が現れるまで新生ポリペプチドの疎水性部分を水分子から隠す働きを持つ。通常のシャペロンは、内部が疎水性領域となっているポケット持ち、ここに基質を隔離する。基質の疎水性領域はポケット内の疎水性領域と相互作用し、不適切な結合は抑制される。

大腸菌の場合、トリガー因子と呼ばれる特殊なシャペロンを持つ。古細菌と真核生物には同様のシャペロンは存在しない。トリガー因子が通常のシャペロンと異なる点は、リボソームの大サブユニットと結合することである。こうして、新たに合成されてリボソームから出てくるタンパク質は直ちにポケット内へと誘導される。2004年にNenad Banは大腸菌のトリガー因子と古細菌リボソームサブユニットとの複合体の結晶化に成功した[10][注釈 2]。複合体中のトリガー因子はその独特の形状から「うずくまった竜(臥竜)」と呼ばれる。臥竜にはそれぞれ頭、背中、腕、尾と喩えられる領域がある。大腸菌には予備のシャペロンとしてDnaKが存在し、トリガー因子は生存に必須ではない。

ヒストンシャペロンとは、ヒストンを裸のDNAに結合させてヌクレオソームを形成させるタンパク質である。このタンパク質の役割は、転写の際に一時的にクロマチン上からヒストンが取り除かれて不安定化したヌクレオソームを元通りにすることである。この不安定化は、RNAポリメラーゼがヌクレオソーム内部の転写領域に接触して転写を行うために実行されていると考えられている。ヒストンシャペロンとして、クロマチン転写促進因子(FACT)が知られている[11]。

真正細菌のシャペロン複合体モデルであるGroES/GroELシャペロン
真正細菌で機能するシャペロンにGroEL(グループI型シャペロニン)がある。このシャペロンはコシャペロン(シャペロン補助因子)GroESの共存によって正常に機能することができる。GroELとGroESはシャペロニンとコシャペロニンと呼ばれることもある(シャペロンとして最初に明らかにされたためこう命名された)。

一方、古細菌にはシャペロニンに相当するものとしてHSp60(グループII型シャペロニン)が存在するが、GroESに相当する補助因子を必要とせず、GimCという因子が補助的に働くという報告がある。真核生物では細胞本体に古細菌と相同のシャペロニンを持ち、オルガネラに真正細菌と相同のシャペロニン(GroELに相当、GroESもある)を持つ。この他、GroEとHsp40を補助因子として必要とするHsp70というシャペロンが全ドメインから見つかっている、

GroEL/GroESシャペロンは以下のように機能する。まず樽のような構造をなしているGroEL/GroES 複合体がその中へ、露出した一連の疎水性アミノ酸部分を取り込む。この初期段階ではシャペロン複合体の内部は疎水性が高い。タンパク質分子(または一部のドメイン)がこのカプセルの中で正常にフォールディングすると、内部は親水性に変化し、これによってフォールディングしたドメインはシャペロン外の水中に放出される。このサイクルは何度も繰り返されるが、疎水性・親水性変化にはGroEL/GroESのコンフォメーションの変化が必要で、ATPの加水分解によりそのエネルギーが供給される。

分子内シャペロンとは、標的タンパク質の内部に存在し、標的タンパク質の正しいフォールディングを導き、かつ、フォールディング後にプロテアーゼによって切除される部分的アミノ酸配列である。このため、成熟タンパク質分子には存在しない。上記で紹介したような、標的タンパク質とは別の独立したタンパク質である一般的なシャペロンとは異なる。 枯草菌のプロテアーゼであるスブチリシンに含まれるものがよく知られる。

分子シャペロンという用語が科学分野で最初に登場したのは1978年のLaskeyらの論文であるといわれている[12]。この論文の中では、ヒストンとDNAの間に生じる不正確なイオン性の相互作用を阻止する働きを持つタンパク質を指す言葉として紹介されていた。このタンパク質は、現在では分子シャペロンの一つとしてヌクレオプラスミンと名づけられている[13]。分子シャペロンという単語が、現在のように、ヌクレオプラスミンだけではないより広範なタンパク質群を指す言葉となるのは、更なる歳月を必要とした。

その理由として、1950年代から1970年代まで、タンパク質のフォールディングは分子シャペロンのような外的因子なしで成立することが一般的であるとされていた点が挙げられる。すなわち、タンパク質のフォールディングはそのアミノ酸配列のみに依存すると考えられていた(アンフィンセンのドグマ)。アンフィンセンのドグマは、リボヌクレアーゼのリフォールデング実験に基づいてアンフィンセンらにより発表された[14]。また、同時期に別の研究グループが、核酸とタンパク質(タバコモザイクウイルスや原核生物リボソーム)を試験管内で混合した結果、それらが自発的に会合して元の構造と機能を再生することを報告した[15][16]。一方で、バクテリオファージのカプシドタンパク質の会合には分子シャペロンのGroELが必要であることは知られていた[17][18][19][20]が、一部の例外程度にしか考えられていなかった。

1980年代に入ると、分子シャペロンの重要性を示唆する研究結果が現れ始めた。その中で重要なものは2つある。第一に、HSP70やHSP90といったヒートショックタンパク質が発見され、しかも、ヌクレオプラスミン様の働きがあることが予想されるようになった。特に、HSP70においては、基質間の不適切な相互作用を最小限に抑える働きや、基質のフォールディング、アンフォールディング、会合、脱会合を助ける働きが示唆された[21]。第二に、植物生化学者のエリスが、後に分子シャペロンと同定されることになる、リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(ルビスコ)サブユニットを基質とするタンパク質を発見した。こと頃のエリスの発見は具体的には、新規に合成されたサブユニットに結合するオリゴマータンパク質が存在すること[22]、このオリゴマータンパク質の結合はサブユニットがホロ酵素に組み込まれるまでの一時的なものであること[23]であった。これらの発見からエリスは、自発的な会合の例外としかみなされていなかった会合補助タンパク質が広範な生物に存在すること、ポリペプチド鎖の会合はそのタンパク質の補助によって適切に制御されていることを考え始めた。

1987年に入り、分子シャペロンという単語は現在とほぼ同じ定義をされることになった。エリスは、ヌクレオプラスミンの機能を説明するための分子シャペロンという用語を、ヌクレオプラスミンと同じような機能を持つタンパク質全般として使用するよう提案したのだ。コペンハーゲンカールスバーグ研究所で開催されたNATO Advanced Study Institute Plant Molecular Biologyでのことであった。このとき、エリスが発表した定義は(1)基質となるポリペプチド鎖のフォールディングとオリゴマー構造への会合が正しく進むように介添えする;(2)基質の最終構造の一部にならないし、基質の立体構造の指定もしない、であった[24]。

この発表の翌年、エリスはGroELのファミリーが生物一般に広く存在すると考え、このファミリーの分子シャペロンをシャペロニンと呼ぶことを発表した[25]。というのも、エリスはHemmingsenらとともに植物のルビスコサブユニットに結合するオリゴマータンパク質が大腸菌のGroELと相同であること同定していた。また、同時期にMcMullinらによって、GroEL抗体に交差する分子量58,000-64,000のタンパク質が酵母、カエル、トウモロコシ、ヒトのミトコンドリアに共通して存在することが明らかにされていた[26]。

編集

^

^ シャペロンの語源はフランス語の、中世ヨーロッパで頭部に着用した布や帽子を意味する用語であった。ここからどのような経緯があったかははっきりしていないが、19世紀末から20世紀初頭のイギリスにおいて、家事使用人の上級職の一つを指すようになった。その仕事内容は「若い未婚の女性が初めて社交界にデビューするときに社交の礼儀作法を指導する」というものであった。ここから転じて分子シャペロンという用語が誕生した。

^ Nenadらが大腸菌のトリガー因子と古細菌リボソームサブユニットの複合体の結晶化を行った経緯は以下の通りである。彼らはトリガー因子の作用機序を推測するため複合体の結晶化してその構造を明らかにすることを求めた。理想は、トリガー因子もリボソームサブユニットも大腸菌のものを用いることであったが、当時、それはできなかった。なぜなら、結晶化されていたリボソームの大ユニットは唯一、古細菌のHaloarcula marismortuiのものであったためである。そこでNenadらはまず、大腸菌のトリガー因子を結晶化した。続いて、リボソームの結合部位が大腸菌古細菌の間で保存されていることを期待して、異なる生物由来の二つのタンパク質を混合して結晶化させた。この方法は成功し、大腸菌のトリガー因子は古細菌リボソームサブユニットと結合し、その状態での立体構造は明らかとなった。こうして、トリガー因子の作用機序について詳細に理論化されることとなった。

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オスモライト(英語: osmolyteあるいは、浸透〔圧〕有効物質、浸透〔圧〕調節物質)は、生物において主に浸透圧を調整する化学物質である。細胞においては細胞外部の浸透圧ストレス(浸透圧勾配)による水の流入あるいは排出に対し細胞容積を保持する機能がある一方で、広範囲の濃度域にわたり酵素などのタンパク質の構造や機能を安定して機能させタンパク質を変性から守る働きもある。

類似名称に、適合溶質 (osmoprotectant) がある。

なお、サプリメント市場においてオスモライトを主成分とするサプリメントが海外で販売されている。

タンパク質は、それぞれのアミノ酸配列に固有の立体構造を自発的に形成する。このことから、タンパク質の天然状態は熱力学的な最安定状態(最も自由エネルギーが低い状態)であると考えられている(Anfinsenのドグマ)。

タンパク質の立体構造安定性は天然状態と変性状態の自由エネルギーの差
Δ
G
d
\Delta G_{{{\rm {d}}}}(変性自由エネルギー)で決まる。なお、温度依存性を議論する場合には、安定性の指標として
e
x
p
(

Δ
G
d
/
k
T
)
exp(-\Delta G_{{{\rm {d}}}}/kT) が用いられることもある。通常、タンパク質の安定性は、温度、圧力、溶媒条件等に依存する。従って、それらの条件をある程度変化させると、タンパク質は変性する。

タンパク質の安定性を決める要因として、ファン・デル・ワールス相互作用、疎水性相互作用、水素結合、イオン結合、鎖エントロピー、ジスルフィド結合などがある。これらの寄与の大きさは、温度等により変わる。

多くのタンパク質は、室温近傍で数十 kJ/mol 程度の
Δ
G
d
\Delta G_{{{\rm {d}}}}をとる。この非常に小さな
Δ
G
d
\Delta G_{{{\rm {d}}}}は変性状態に対して天然状態が絶妙なバランスで安定であることを示しており、この性質は限界安定性 (marginal stability)と呼ばれている。

温度が変化すると、変性エンタルピー
Δ
H
d
\Delta H_{{{\rm {d}}}}や変性エントロピー
Δ
S
d
\Delta S_{{{\rm {d}}}}は急激に変化するが、それらの変化の大部分は相殺して
Δ
G
d
\Delta G_{{{\rm {d}}}} に寄与しない(エンタルピー・エントロピー相殺)。変性熱容量変化
Δ
C
p
,
d
\Delta C_{{p,{\rm {d}}}}は正の値を持ち、タンパク質内部のアミノ酸残基(疎水性アミノ酸が多い)の水和に伴う水和水の熱容量変化によるものであると考えられている。

タンパク質はその変性の途中で、二次構造はあまり変化しないのに三次構造が壊れた状態を取ることがある。これをモルテン・グロビュール状態 (molten globule state) とよぶ[13]。この状態は高塩濃度下かつ低pHの条件で安定に存在することがあり、タンパク質の折り畳みの初期過程を反映したものであると考えられている。

タンパク質は高温になると変性する。これは熱変性と呼ばれる。加熱するとタンパク質の一次構造が変化することはほとんど無いが、二次以上の高次構造は崩れやすい。約60℃以上になると、周囲に軽く結びつき水和状態をつくる水分子が振動し高次結合部分が解け、細長い状態になる。さらに内部に封じられた疎水部分が露出し、他のポリペプチドの露出部分と引き合い、全体に詰まった状態になる。通常は透明で液状の卵白が、加熱されると白い固形に変化するのはこの原理からである[7]。

また、低温でも変性を起こすが、通常のタンパク質が低温変性を起こす温度は0 ℃以下である。タンパク質の安定性は変性自由エネルギー
Δ
G
d
\Delta G_{{{\rm {d}}}}で決まる。変性熱容量は室温付近でほぼ一定値であるため、
Δ
G
d
\Delta G_{{{\rm {d}}}}の温度依存性は上に凸の曲線になる。この曲線と
Δ
G
d
=
0
\Delta G_{{{\rm {d}}}}=0の交点が低温変性と熱変性の温度である。

タンパク質はpHの変化によっても変性する。pHが極端に変化すると、タンパク質の表面や内部の荷電性極性基(Glu、Asp、Lys、Arg、His)の荷電状態が変化する。これによりクーロン相互作用によるストレスがかかり、タンパク質が変性する。

タンパク質は圧力変化によって変性することが知られている。通常のタンパク質は常圧(0.1 MPa)近傍でもっとも安定であり、数100MPa程度で変性する。キモトリプシンは例外的であり、100 MPa 程度でもっとも安定である。そのため、温度によっては変性状態にあるものが加圧によって巻き戻ることがある。圧力変性は天然状態よりも変性状態の体積が小さいために起こるものであり、ルシャトリエの原理で説明できる。

尿素やグアニジン塩酸は水素結合によるタンパク質の構造安定性を、結合間に割り込むことで低下させる作用を持つため、その溶液中でタンパク質は変性する。このようにタンパク質を変性させる作用をもつ物質は変性剤と呼ばれる。また通常は変性剤とは呼ばれないが、界面活性剤もタンパク質を変性させる作用がある。

タンパク質は生物に固有の物質である。その合成は生きた細胞の中で行われ、合成されたものは生物の構造そのものとなり、あるいは酵素などとして生命現象の発現に利用される。また、類似のタンパク質であっても、生物の種が異なれば一次構造が異なることは普通である。タンパク質はアミノ酸が多数結合した高分子化合物であるが、人工的な高分子のように単純な繰り返しではなく、順番がきっちりと決定されている。これは、そのアミノ酸の種と順番がDNAに暗号で記述されていることによる。遺伝子暗号は往々にしてその形質に関係するタンパク質の設計図であると考えられる(一遺伝子一酵素説)。エンゲルスは「生命はタンパク質の存在様式である」と言ったが、故のないことではない。

タンパク質の生体における機能は多種多様であり、たとえば次のようなものがある[14]。

酵素タンパク質
代謝などの化学反応を起こさせる触媒である酵素[15]。細胞内で情報を伝達する多くの役目も担う[16]。
構造タンパク質
生体構造を形成するタンパク質:コラーゲン、ケラチンなど
輸送タンパク質
何かを運ぶ機能を持つ種類で、酸素を運ぶ赤血球中のヘモグロビンや血液中に存在し脂質を運ぶアルブミンコレステロールを運ぶアポリポタンパク質などが当たる[16]。
貯蔵タンパク質
栄養の貯蔵に関与するタンパク質であり、卵白中のオボアルブミンや細胞中で鉄イオンを貯蔵するフェリチンやヘモシデリンなどである[16]。
収縮タンパク質
運動に関与するタンパク質。筋肉を構成する筋原繊維のアクチン、ミオシンなど。細長いフィラメントを構成し、互いが滑りあう事で筋肉の収縮や弛緩を起こす[14]。
防御タンパク質
免疫機能に関与する種類であり、抗体とも言われる。B細胞によって作られるグロブリンがこれに当たる[16]。
調節タンパク質
DNAのエンハンサーと結合して遺伝発現を調整するタンパク質や、細胞内でカルシウムを使って他のたんぱく質の働きを調整するカルモジュリンなどが当たる[16]。
その他、よく知られたタンパク質に下村脩が発見した蛍光に関わる提灯形状のタンパク質であるGFP[9]やRFPなどがある。特定波長域の励起光を受けると蛍光を発する。一部の生物(オワンクラゲ, スナギンチャクなど)にみられる。

これらのタンパク質が機能を発揮する上で最も重要な過程に、特異的な会合(結合)がある。酵素および抗体はその基質および抗原を特異的に結合することにより機能を発揮する。また構造形成、運動や情報のやりとりもタンパク質分子同士の特異的会合なしには考えられない。この特異的会合は、基本的には二次〜四次構造の形成と同様の原理に基づき、対象分子との間に複数の疎水結合、水素結合、イオン結合が作られ安定化することで実現される。

ルシャトリエの原理(るしゃとりえのげんり、英語:Le Chatelier's priciple)もしくはルシャトリエの法則(— ほうそく、— law)とは、化学平衡状態にある反応系において、その状態に対して何らかの変動を起こさせたときに、平衡が移動する方向を示す原理のことである。 1884年にアンリ・ルシャトリエ (Henry Louis Le Chatelier) によって発表された。 1887年にカール・ブラウン (Karl Ferdinand Braun) によっても独立に発表されたため、ルシャトリエ=ブラウンの原理 (Le Chatelier – Braun priciple) ともいう。

ルシャトリエの原理の内容は次の通りである[1]。

平衡状態にある反応系において、状態変数(温度、圧力(全圧)、反応に関与する物質の分圧や濃度)を変化させると、その変化を相殺する方向へ平衡は移動する。
すなわち、反応温度を上げた場合、平衡は反応熱を吸収して反応温度を下げる方向へ移動する。 反応温度を下げた場合、平衡は反応熱を発生させて反応温度を上げる方向へ移動する。 気体の反応において全圧を上げた場合、平衡は気体分子の数を減らして圧力を下げる方向へ移動する。 全圧を下げた場合、平衡は気体分子の数を増やして圧力を上げる方向へ移動する。 また反応に関与しているある物質の分圧や濃度を上げた場合、平衡はその物質を消費して分圧や濃度を下げる方向へ移動する。 反応に関与しているある物質の分圧や濃度を下げた場合、平衡はその物質を生成して分圧や濃度を上げる方向へ移動する。

例として

N
2
+
3
H
2

2
N
H
3
+
92.2
k
J
{\displaystyle {\rm {N_{2}+3H_{2}\longrightarrow 2NH_{3}+92.2kJ}}}
の反応について考える。

平衡状態

N
2
+
3
H
2

2
N
H
3
{\displaystyle \mathrm {N_{2}+3H_{2}} \rightleftarrows \mathrm {2NH_{3}} }
の平衡定数 K はそれぞれの化学種Aの分圧(より厳密にはフガシティー)を PA とすれば

K
=
P
N
H
3
2
P
N
2

P
H
2
3
{\displaystyle K={\frac {{P_{\rm {NH_{3}}}}^{2}}{P_{\rm {N_{2}}}\cdot {P_{\rm {H_{2}}}}^{3}}}}
と表される。

また、平衡定数 K は反応ギブズエネルギーΔG との間に

ln

K
=

Δ
G
R
T
{\displaystyle \ln K=-{\frac {\Delta G}{RT}}}
の関係があり(R は気体定数、T は絶対温度)、さらに反応エンタルピーΔH、反応エントロピーΔS と

Δ
G
T
=
Δ
H
T

Δ
S
{\displaystyle {\frac {\Delta G}{T}}={\frac {\Delta H}{T}}-\Delta S}
の関係もある。そこで反応エンタルピー、反応エントロピーは温度によらず一定とすると


ln

K

T
=
Δ
H
R
T
2
{\displaystyle {\frac {\partial \ln K}{\partial T}}={\frac {\Delta H}{RT^{2}}}}
となる。この式をファントホッフの式という[2]。 反応温度による平衡の移動についてはファント・ホッフによってル・シャトリエよりも早く平衡移動の原理として考察されていた[3]。 この式によれば反応エンタルピーが正(吸熱反応)ならば、反応温度が上昇すると平衡定数は増加し、生成物への移行がより有利になる。 逆に反応エンタルピーが負(発熱反応)ならば、反応温度が上昇すると平衡定数は減少し、原料への逆反応がより有利になる。

アンモニアの生成反応は発熱反応、すなわち反応エンタルピーは負の反応である。 よってファントホッフの式により反応温度が上昇すると平衡定数は減少し、吸熱方向の反応である原料への逆反応が有利となる。 このようにしてルシャトリエの原理が説明できる。

なお、一定容積下で温度を変化させた場合には全圧が変化するため、それによる平衡の移動と競合することになりルシャトリエの原理によって平衡の移動する方向を予想できなくなることがある。

反応系を加圧もしくは減圧して全圧をa倍にすることを考える。 すると平衡定数の式の右辺は

a
2
P
N
H
3
2
a
P
N
2

a
3
P
H
2
3
=
a

2

P
N
H
3
2
P
N
2

P
H
2
3
{\displaystyle {\frac {{a^{2}P_{\rm {NH_{3}}}}^{2}}{aP_{\rm {N_{2}}}\cdot {a^{3}P_{\rm {H_{2}}}}^{3}}}=a^{-2}\cdot {\frac {{P_{\rm {NH_{3}}}}^{2}}{P_{\rm {N_{2}}}\cdot {P_{\rm {H_{2}}}}^{3}}}}
となる。

a>1、すなわち加圧した場合、この式の値は K よりも小さくなって平衡が崩れる。 そのため分母を減らして分子を増やす方向、すなわちアンモニアが生成する方向へ反応が進行する。 a<1、すなわち減圧した場合、この式の値は K よりも大きくなって平衡が崩れる。 そのため分母を増やして分子を減らす方向、すなわちアンモニアが原料に戻る方向へ反応が進行する。

一般の気体の反応においてaの指数は(反応式の生成系の分子数)-(反応式の反応系の分子数)となる。 よって加圧した場合はいずれにせよ分子数の少ない側へ平衡が移動し、減圧した場合分子数の多い側へ平衡が移動することになる。 このようにしてルシャトリエの原理が説明できる。

平衡状態となっているこの系に、水素やアンモニアの分圧、温度を変化させずに、窒素を加えて窒素の分圧を増やしてやると平衡定数の式の右辺の分母が大きくなって平衡状態が崩れる。 そうすると分母を減らし分子を増やす方向、すなわち窒素を消費してアンモニアを増やす方向へ平衡が移動し、再び等号が成立する。 このようにしてルシャトリエの原理が正しいことが説明できる。

なお、反応系の全圧を一定に保ったまま窒素を加えた場合、窒素の分圧は増えるが水素の分圧が減少するため、分母は必ずしも大きくなるとは限らない。 このように2つ以上物質の分圧や濃度を同時に変化させてしまった場合には単純にルシャトリエの原理から平衡の移動する方向を予想することはできないので注意する必要がある。

P. W. Atkins 『アトキンス物理化学』上、千原秀昭・中村亘男訳、東京化学同人、2001年、第6版。ISBN 4-8079-0529-5。
J.H.van't Hoff(著)、松尾隆祐、妹尾学(訳) 『化学熱力学 5 化学動力学の研究』 日本化学会、学会出版センター〈化学の原典 3〉。ISBN 4-7622-7883-X。

フガシティー(英: fugacity)または逃散能、散逸能とは、物理化学の分野において、圧力の高い実在気体の化学平衡を扱うときにも、理想気体の化学ポテンシャルの形式が成り立つようにする意図で導入された概念である[1]。

この概念はもとはウィラード・ギブズが escape tendency という考えを熱力学的平衡に用いたことに由来し[1]、ギルバート・ルイスが導入した。

成分i のフガシティーfi は次のように定義される[2]。

f
i
:=
p
0
exp

(
μ
i

μ
i
0
R
T
)
{\displaystyle f_{i}:=p^{0}\exp \left({\frac {\mu _{i}-\mu _{i}^{0}}{RT}}\right)}
p0 :基準圧力(通常は1気圧)
μi :成分i の化学ポテンシャル
μi0 :基準圧力における化学ポテンシャル
フガシティーは圧力と同じ次元をもち、単位にはパスカルが用いられる。

理想気体は分子間力を持たず、圧力は運動エネルギーのみから生ずる。このとき、成分i の化学ポテンシャルμi は

μ
i
=
μ
i
0
+
R
T
ln

p
i
p
0
{\displaystyle \mu _{i}=\mu _{i}^{0}+RT\ln {\frac {p_{i}}{p^{0}}}}
pi :成分i の分圧
で表される。

それに対して、実在気体は分子間力を持つから、その補正を加える必要がある。だが、分子間力は気体の種類によって異なり、それを考慮することは非常に扱いにくい。そのため分子間力を初めから補正に織り込み、大きな分圧でも同じ形式の

μ
i
=
μ
i
0
+
R
T
ln

f
i
p
0
{\displaystyle \mu _{i}=\mu _{i}^{0}+RT\ln {\frac {f_{i}}{p^{0}}}}
で表されるようにした、「ある実在気体と同じ化学ポテンシャルを持つ理想気体の圧力」がフガシティーである。

フガシティーは、化学ポテンシャルを「補正した圧力」の形式で表したものである。それは物質の相から相(たとえば、液相、固相、気相)への物質の逸散性、「逃げやすさの度合い」を示す。一定の温度と圧力の下で、均一の物質であってもおのおのの相に対して異なる逸散性をもつことになる。最も低いフガシティーを持つ相が安定であり、最も低いギブス自由エネルギーを持つことになる。

理想気体ではフガシティーは分圧と同じとなる。また、低分圧の極限として次も成り立つ[1]。

lim
p
i

0
f
i
=
p
i
{\displaystyle \lim _{p_{i}\rightarrow 0}f_{i}=p_{i}}
実在気体では分子間相互作用が反映されているので、フガシティーfi は他の成分の分圧にも依存する。フガシティーと分圧の比fi /pi を活動度係数という。

活量(かつりょう、activity)は、できる限りモル濃度(あるいは他の濃度)に近い性質を持ち、しかも厳密な熱力学の関係に登場し得る量である。一般的には、温度、圧力、物質量についての複雑な関数になる[1]。

理想系と実存系に存在する誤差を修正するためにギルバート・ルイスによって導入された物理量で、普通
a
a、或いは
A
Aと表される。活動度と呼ばれる場合もある。

理想的な混合物の場合には、ラウールの法則により
i
i成分の化学ポテンシャルは以下のようにモル分率で与えられる。
μ
i
\mu _{i}Θは基準となる化学ポテンシャル、
x
i
x_{i}は
i
i成分のモル分率、カッコ内は変数を表す。

μ
i
(
p
,
T
)
=
μ
i
Θ
(
T
)
+
R
T
ln

x
i
\mu _{i}(p,T)=\mu _{i}^{\Theta }(T)+RT\ln x_{i}\,
これに対し、実際の系では以下のように活量で表される。

μ
i
(
p
,
T
)
=
μ
i
Θ
(
T
)
+
R
T
ln

a
i
\mu _{i}(p,T)=\mu _{i}^{\Theta }(T)+RT\ln a_{i}\,
つまり

Δ
μ
i
=
R
T
ln

a
i
\Delta \mu _{i}=RT\ln a_{i}\,
a
i
=
e
Δ
μ
i
/
R
T
a_{i}=e^{{\Delta \mu _{i}/RT}}\,
である。

活量係数
γ
\gamma は次式によって定義される。

a
i

γ
i
x
i
a_{i}\equiv \gamma _{i}x_{i}\,
これは理想とする数値からのずれを表す指標となっている。

絶対活量は以下のように定義される。そのため
a
aは相対活量と呼ばれることもある。

λ
i

e
μ
i
/
R
T
,
λ
i
/
λ
i
Θ
=
Δ
μ
i
/
R
T
\lambda _{i}\equiv e^{{\mu _{i}/RT}},\lambda _{i}/\lambda _{i}^{\Theta }=\Delta \mu _{i}/RT

^ 田崎晴明 『熱力学 現代的な視点から』 培風館〈新物理学シリーズ 32〉、2000年4月12日、初版、184頁。ISBN 9784563024321。

ヘンリーの法則(ヘンリーのほうそく、英: Henry's law)は気体に関する法則であり、1803年にウィリアム・ヘンリーにより発表された。

「揮発性の溶質を含む希薄溶液が気相と平衡にあるときには、気相内の溶質の分圧pは溶液中の濃度cに比例する」[1]

と定義される。

ラウールの法則は実際の溶液においては溶液中の多量成分(溶媒)については良く成り立つが、少量成分(溶質)においては成り立たないことが多い。

しかし、この場合でも溶質の蒸気圧をp、モル分率をχとすると

p
=
K
H
χ
p = K_H \chi

が成り立つ。KHは比例定数である。

溶質がヘンリーの法則に従うような溶液を理想希薄溶液という。

また溶質が気体である場合、上記の式は溶液中の気体のモル分率と気相での圧力が比例することを意味する。モル分率が充分に小さい範囲ではモル分率は濃度に比例するから、「気体の溶解度は圧力に比例する」といえる。これもヘンリーの法則と呼ばれる。