逆向きの水分子を遠ざける

尿崩症(にょうほうしょう、Diabetes insipidus; DI)とは、バソプレッシンの合成または作用の障害により水保持機構が正常に働かず、多尿となる疾患のことである。英語名は糖尿病と違って尿が無味であることが由来(Diabetes=多尿、Insipidus=無味)。

明らかにアクアポリンの変異が原因と思われる症例が2つ見つかった。

アクアポリン2遺伝子の突然変異により、遺伝性の尿崩症が起こった。
アクアポリン0遺伝子を変異させたマウスが先天性白内障になった。
極一部のヒトはアクアポリン1が少ないと思われる。彼らは普段は健康であるが、体の水分量が少なくなったときに水を再吸収する能力が低い。アクアポリン1をノックアウトしたマウスも同様の症状を示した。

アクアポリン4に対する自己免疫疾患は視神経脊髄炎あるいはDevic's diseaseと呼ばれ、急性視神経炎と急性脊髄炎を繰り返す。多発性硬化症の亜型と考えられていたが、近年独立した疾患概念として確立してきている。

アクアポリンは6個の右向きのαヘリックス構造を含んでおり、N末端とC末端は細胞質側の細胞膜表面に突き出している[6][11]。N末端側とC末端側の半分の配列は類似しており、繰り返し配列が存在している。この繰り返し部分は進化の初期段階に半分のサイズの遺伝子が重複したものではないかと考える研究者もいる。

水分子はチャネルに入ると酸素原子を下方向に向ける。中間部では配向が逆になり、酸素原子が上を向く。この細孔内の水の回転運動は、2つのNPAモチーフのアスパラギンと水分子の酸素原子間の水素結合によるものである。水分子は1列でチャネルに下向きに入り、上向きに出る。Grotthussメカニズム(Grotthuss mechanism)によって逆向きの水分子を遠ざけることで、チャネルの水分子通過速度を上げている[12]。